水深用アナログトランスデューサー
計測データをアナログ信号として対応機器に送ります。水深表示に対応しているi40、i50航海計器ディスプレイが別途必要となります。また、iTC-5と呼ばれるアナログ/デジタル信号変換器を経由することでi70やAxiomシリーズといったデジタル信号(SeaTalkNG/NMEA2000)専用の機器にもデータを共有することが出来ます。STシリーズその他レガシーモデルのディスプレイとの互換性につきましては、セレクションガイドにまとめております。
ハルの材質に適するトランスデューサーをお選びください
各種トランスデューサーは合成樹脂、ステンレス、ブロンズのいずれかで出来ており、それぞれ適合するハルの材質が異なります。
- 合成樹脂:FRPや金属製ハル向け
- ステンレス:鉄製、アルミニウム製ハル向け
- ブロンズ:FRPや木造のハル向け
特に木造のハルにはプラスチックよりブロンズ製のトランスデューサーをお勧め致します。これは木材の膨張でプラスチックのトランスデューサーが損傷し、浸水の原因となる場合があるためです。金属製のハルにステンレス製のトランスデューサーを設置する際は必ず電触防止の加工を施して下さい。
各品の特徴
M78713-PZ:一般的なスルハル型としては僅かながら対応デッドライズが大きい。
E26009:船内側の立ち上がりが低く、設置場所の自由度が高くなっています。
E26001-PZ:インハル型で、ハルの厚みや材質に影響されるものの、出力も高い。
E26027-PZ:トランサム固定型で対応水深も深く、高低二種の周波数を使い分け。
E26030:標準的な樹脂系スルハル型トランスデューサーです。
M78717:ブロンズ製のため木造艇などハルの寸法が変動しうる場合に安心です。
E26019-PZ:大型艇など境界層の影響が懸念される場合にお勧めです。
※ 上記品番および下記表中の記載事項は、RaymarineおよびAIRMAR(トランスデューサー製造元)のウェブサイトの記載事項をまとめたものです。しかしながら、製品には大小様々なアップデートが施されており、ケーブル長などに変更が加わっている可能性があります。また、メーカー側で廃番などになったものなど情報を取得できない状況となっている場合もあり、センサー仕様に関する記述は完全な正確さを保証出来ないのが現状です。万が一不都合が生じました場合は施工前の新品状態に限りご返品を承ります。
境界層って何?センサーにどう影響するの?
A:船底付近にできる乱流で、多くは気泡も含みます
海面付近には大量の微細な気泡が漂っています
これは波の影響によるもので、特に外洋では水深10m付近にまで気泡が存在し、それらが浮いてくることで界面付近の気泡が非常に多くなっていることもあります。気泡は音波を吸収または反射するため、水深計やソナー振動子の表面を気泡が流れるとノイズの原因となったり、最悪の場合計測を完全に妨げてしまうことすらあります。
泡を含み流れが遅くなるのが境界層
船が水上を進むとき、当然ハルと水との間には抵抗が生まれ、ハルに引きずられている船底付近の水は流れが遅くなります。これを境界層と呼びます。また、船首側で境界層が生成されて水が船底に潜る際、先述の水面付近にある泡も一緒にこの流れに巻き込まれます。境界層の影響は抵抗を生んでいる物体から遠ざかるほど小さくなるため、船首付近では速さの異なる水流が層流となって後方へと流れています。この層は船体後方へと流れていくに連れて乱流化し、また層の厚みも増していきます。
境界層を作りやすい船
境界層は、船速が速いほど、また船底に抵抗を生むものが多いほど形成されやすくなります。このため、比較的低速なヨットなどの場合、境界層の影響はほとんどありません。しかしながら、船底塗装を怠るなどして生物が付着していたり、塗膜がスケルトン層化していて流水研磨が十分でないなどの場合は船底の水流が乱れている恐れがあります。また、舷側が反り上がったハル形状の場合は気泡がある程度横にそれて逃げてくれますが、船底が扁平な幅の広い船の場合、境界層の影響を強く受ける場合があります。
センサーへの影響と対策
気泡は音波系計器に、引っ張られた遅い水流は対水速度に影響を及ぼす可能性があります。計器に関連する一般的な対策としては、船体の前寄りにトランスデューサーを設置します。前方では境界層が小さく、乱流化せずあくまで整然とした層流が流れているため影響は少ないとされます。また、当然の帰結ではあるものの、船底に凹凸を作らないことは燃費や走行性の観点からも重要です。船底塗料一つとっても、生物の付着以外に塗膜自体の変化においてもお船の使い方によって最適解が変わってきます。ぜひ下記リンク先より船底塗料についてもご参照下さい。
【関連情報】
関連商品:船底塗料(プラドールZ)
品番 | 設置方法 | 計測データ | 適合ハル | 最大深度 | 周波数 | ビーム幅 | ケーブル全長 | デッドライズ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
M78713-PZ | スルハル | 水深 | FRP|金属 | 150m | 50/200kHz | 14度 | 13.5m | 0-24度 |
E26009 | スルハル | 水深 | FRP|金属 | 180m | 235kHz | 12-45度 | 9m | 7-12度 |
E26001-PZ | インハル | 水深 | FRP | 300m | 50/200kHz | 12-45度 | 9m | 0-22度 |
E26027-PZ | トランサム | 水深 | FRP|木材|金属 | 360m | 50/200kHz | 12-45度 | 9m | 2-22度 |
E26030 | スルハル | 水深 | FRP|金属 | 180m | 235kHz | 12-45度 | 13.5m | 0-20度 |
M78717 | スルハル | 水深 | FRP|金属 | 180m | 200kHz | 14-24度 | 13.5m | 0-20度 |
E26019-PZ | スルハル | 水深 | FRP|木材 | 360m | 50/200kHz | 12-45度 | 13.5m | 0-26度 |
専用計器ディスプレイに直結した配線イメージ
3-4、8-10、9-11のように、各種トランスデューサーは計器ディスプレイ背面に平端子で直結できます。各種ディスプレイはトランスデューサーから受け取ったデータをデジタル化してネットワーク上に共有するため、ディスプレイ経由でネットワーク全体に計測データが共有できます。個別に専用ディスプレイを設置することで各種計測データを大きな数字で表示できるため画面の真前に居ない状態でも数値を視認しやすいというメリットがあります。一方、複数のディスプレイが必要となるためコンソールなどに大きな設置面積が必要となり、導入費用も大きくなります。Axiomなどの1画面にデータを集約するのみで良い場合は、後述のiTC-5経由での配線が推奨されます。
iTC-5変換器に集約した接続イメージ
航海計器は多くの場合、水深、対水速度、風向風速の3つのトランスデューサーを設置します。こうした複数のトランスデューサーをiTC-5変換器に集約し、i70やAxiomといった多数のデータ表示機能を備えた画面上で各種計測データを一元管理することも出来ます。複数の個別ディスプレイを設置する必要がなくなるため、ディスプレイの設置場所が限られている場合や一画面に全てのデータを出したい場合にお勧めです。低コストな設置プランですが、表示データの切り替えが煩わしかったり、画面から離れていると読めないような小さな数字でしか表示できない、表示画面が一つの場合これがダウンすると全てのデータが確認不能になるなど、ディスプレイを一つにまとめてしまうことによるデメリットもございます。ウィンドアングルはアナログ針のほうが見やすい、安全データでもある水深は大きな数字で表示してどこからでもひと目で視認したいなど、用途に応じた構成をご検討下さい。
1-5に接続したアナログトランスデューサーのデータをデジタル変換し、6-8ソケットからSeaTalkNGネットワークに接続することでネットワーク全体にデータを共有します。電源もSeaTalkNGネットワークから供給を受けられます。
古いスルハルって流用できる?他メーカーのスルハルは?
A-1:流用可否はご案内が非常に難しいのが現状です
トランスデューサーの製造元であるAIRMAR社では予告なく製品の廃番や仕様変更が行われます。これは製品の開発、品質向上の努力を継続しているメーカーにあっては当然のことであり、旧型と現行型との寸法比較等は容易に行うことが出来ません。とりわけRaymarine製品はOEM製品としてAIRMAR社の製品を採用しており、AIRMAR側の情報を参照してもRayamrineにて採用されている(されていた)製品の詳細に行き当たらないことが多分にあります。また、他社製のスルハル流用につきましては、弊社では一切のご案内が出来かねますと共に、浸水等が発生した場合の責任も負いかねます。
A-2:いずれにせよスルハルごとの交換を推奨いたします。
経年劣化によるセンサー機能不全の場合、スルハルも設置年数が長くなっていることが予想され、コーキング他水密処理およびスルハル自体の劣化が懸念されます。特にスピード計など頻繁な抜き差しが前提となるセンサーのスルハルには内部に簡易な止水弁がついております(劣化が懸念される可動部の存在)。更に、スルハル流用をご希望の場合、直径をお問い合わせ頂くことが多くございますが、センサーはトップ部分でスルハルに固定するようになっており、この状態で先端が適切に船外に露出している必要があります(スルハル立ち上がり長さの問題)。このように、スルハル、センサーの寸法を総合的に検証する必要性を勘案致しますと、新たなトランスデューサーに適合することが担保されている新品のスルハルへの交換は、その後の長期的な安全使用上も非常に有効です。
A-3:Raymarine品番でのみ確定的なご案内が可能です。
上記に関わらず、サイズさえ合えばスルハルの交換は必要ないことが確定しているケースもあると存じます。そうした場合は、交換されるセンサーの品番(E26008など多くは英字+5桁の数字)をお知らせ下さい。当然ながら同一型番であることが確認できれば、スルハルサイズはもとより配線全長が足りるか否か、立ち上がりの高さ等の問題で同じ場所に設置できないような事態が起きないかなどを確定的にご案内することが可能です。なお、Raymarineではトランスデューサーにスルハル、ブランキングプラグ(センサーの代わりに入れておく栓)などが同梱されており、単体販売はございません。
【関連情報】
関連情報はありません。
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